、 2026年7月2日
内閣総理大臣 高市 早苗 殿
要請書
「出生前診断」の広がりによるしょうがいしゃの否定や、社会保障予算を削減するために、政治の場で「尊厳死」を推進しようという主張がされたり、医学会から「消極的安楽死」を推進するガイドラインが発表されたり、優生思想があおられています。わたしたちは、第2第3の津久井やまゆり園事件が起こるのではないか、という不安を常に感じています。 ですから、国連の指摘する観点での津久井やまゆり園事件の総括と再発防止の検討は、国として急務の課題である、と考えます。
以下、私たちの思いを述べ、要請項目を示します。
19人のしょうがいしゃが殺され、26人が重軽傷を負った津久井やまゆり園事件から、今年の7月で、10年。事件直後からインターネット上には、しょうがいしゃの生存を否定する発言があふれ、事件をまねする脅しの動きもありました。
ところが、この事件に対して当時の安倍政権が行ったことは、1.入所施設への外部侵入に対する防犯措置 2.せいしんしょうがいしゃに対する管理の強化を進めること、これだけです。「異常な人がおこした事件」としてかたづけてしまい、事件に向き合いませんでした。「しょうがいしゃは、不幸しかつくらない」政府は、この犯人の言葉に、真っ向から反論するべきでした。
2022年10月、国連の障害者権利委員会から発表された「日本の第1回政府報告に関する総括所見」の中では、国としてこの事件に対する総括、再発防止を求めています(注1)が、国は何もやっていません。
2024年10月には国会で、「旧優生保護法に基づく優生手術等の被害者に対する謝罪とその被害の回復に関する決議」が全会一致で採択されていますが、その法の中の「決意」(注2)も生かされてはいません。
こうした観点に基づき、以下に記述する項目を、要請します。
(注1)パラグラフ9のbでは、障害者権利委員会の懸念事項として、「主に社会における優生思想及び非障害者優先主義により2016年に相模原市津久井やまゆり園で発生した殺傷事件に対して、包括的な対応がなされていないこと」を指摘している。 パラグラフ10のbでは、「優生思想及び非障害者優先主義に基づく考え方に対処する観点から、津久井やまゆり園事件を見直し、社会におけるこうした考え方の助長に対する法的責任を確保すること」と記述されている
(注2)「優生思想に基づく偏見と差別を含めておよそ疾病や障害を有する方々に対するあらゆる偏見と差別を根絶し、全ての個人が疾病や障害の有無によって分けへだてられることなく、尊厳が尊重される社会を実現すべく、全力を尽くすことをここに決意する」
【要請項目】
(1)2016年7月26日の事件直後から、政府は、精神保健福祉法の措置入院体制の検討など、せいしんしょうがいしゃの管理を強める方向での検討を開始しました。しかし、司法の場では、植松の責任能力があるとされ、2020年3月16日の判決は、「被告の重度障害者への考えは、勤務経験などから来ており、了解可能だ。病的な思考障害とは言えない」と述べています。
わたしたちは、政府が津久井やまゆり園事件に対処しようとして、せいしんしょうがいしゃ対策をすすめようとしたことは、間違いだったと考えますが、政府としての見解を示してください。
(2)国連の障害者権利委員会の指摘に沿った総括を行ってください。そして、優生思想=しょうがいしゃ差別を許さず、同様の事件を起こさせないくにの決意を、国内外に発表してください。
(3)上述した横浜地裁判決では、「被告の重度障害者への考えは、勤務経験などからきており」と述べています。また、事件後に行われた神奈川県立施設の調査においても、入所者の人権侵害にかかわる問題が浮上しました。
国として、神奈川県が行ったような調査を全国的に実施し、入所者の人権侵害を起こすような職場環境があるのかどうかを、調査してください。
(4)以上の観点で総括を進めるにあたっては、ちてきしょうがいしゃと、せいしんしょうがいしゃの委員を、確実に参加させてください。事件で殺される対象となったのが、ちてきしょうがいのある方々であり、施設入所体験を持つ方の思いが語られるべきだからです。また、政府の事件後の対応によって苦しんだ、せいしんしょうがいしゃの思いも反映されなければなりません。加えて、優生思想としょうがいしゃ差別の問題に取り組んできた市民をも参加させてください。
以上
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